「髪は女の命」と言われた時代に、髪をバッサリと切ってヘアスタイルを変えることはかなり勇気が必要だったと思われます。それは70年代を生きた女性たちにとってもそうでした。
『anan』は創刊年から何度もヘアスタイルについての特集を組み、今回ピックアップした『anan』No.95では読者にショートカットを強く推しています。当時女性のヘアスタイルといえばロングヘアが一般的であり人気でした。そこに「ふわふわと長い髪などむしろ野暮」「あっさり短い髪の女が、ひどく女っぽい」など、かなり挑発的な提案をしています。さらに「小ぶりの頭がしゃれている」「いまの服を着るための資格」と、ショートヘアであることがオシャレのマスト条件であることをほのめかしています。現在では特定の一つの髪型をいち雑誌がこのように激推しなんてちょっとありえませんが、当時の『anan』はファッションや女性の生き方に対する提案を積極的にしていました。
さらにこの号では美容院の選び方、マナー、コツ等も指南しています。「オドオドしないで自分の希望を堂々言う」「いちばん自分の雰囲気を感じさせる服(で美容院に行く)」「(週刊誌を読まず)つねにジロジロいろいろ観察する」…etc。美容院ってヘアスタイルを変えるところなので、気分は高揚するのですが同時に緊張感も必ずあります。現代と違い情報に溢れていない70年代、このようなアドバイスに多くの女性が励まされたのではないでしょうか?
少し前までは美容院へ行くと、髪型特集の雑誌やヘアカタログが多くありましたが、ここ数年はSNSの台頭もあり、スマホで自分のなりたい髪型を探すようになりました。『anan』は50年前から今日に至るまでの女性に「なりたい自分」への道筋を示してきたのです。
1974年3月5日発売(3月20日号) No.95