女性の自立を応援してきた『anan』。1980年代前半には就職情報が数回にわたって特集されています。当時、就職情報誌はもちろん存在していましたが、『anan』は求人情報だけではなく女性に人気の業界(マスコミ・広告・外資系・ファッションメーカー)の人事担当者や実際に働いている若手女性社員に取材をし、よりリアルな姿を読者に届けていました。
また、就職情報だけではなくスタイリスト、プレス、デザイナー、パタンナー、イラストレーター…etc.これらのカタカナ職業に着目し、オシャレで憧れの職業として紹介。その最たるものが「ハウスマヌカン」で、『anan』No.388では“いまいちばん興奮的職業の「ハウスマヌカン」になる!”という特集が組まれています。ハウスは英語で家、マヌカンはフランス語でマネキンのこと、「ハウスマヌカン」って一体なんなのでしょうか?
答えはショップ店員さんのことです。1980年代のファッションといえばDCブランドが大ブーム。そのDCブランドショップの「ハウスマヌカン」は憧れの人気職業でした。今回ピックアップした『anan』No.388では“「ハウスマヌカン」はただ服を売るだけではなく、モデル、スタイリスト、アドバイザー、バイヤーを兼ねるマルチ的職業”とし彼女たちが高い技術を持って働いていることを紹介しています。また40名近い「ハウスマヌカン」が誌面のモデルになったり、彼女らの私生活やヘアメイクのコツ、さらには行きつけのお店紹介のページも。もちろん就職情報も詳しく特集されているのですが、極めつけは「ハウスマヌカン物語」。あるハウスマヌカンの半生(赤ちゃんの頃~現在)が7ページにもわたって紹介されているのです。注目すべきは、彼女が結婚後も精力的に働き続けていること。仕事とは単なる結婚までの腰掛けではない、ということを伝えています。1970年代後半から女性の就業率が増加し始め、夫婦共働き世帯は1980年から現在までほぼ毎年増加しています。1980年代前半というのは女性の働き方に対する意識が変わりはじめた頃なのかもしれません。『anan』No.388は単なる職業紹介や就職情報ではなく、「ハウスマヌカン」という職業に注目しながら女性に仕事をするやりがいを伝えています。『anan』は女性と社会の意識の変化をうまくキャッチし、彼女たちが求めていた情報を的確に伝えていました。
1983年7月8日発売(7月15日号) No.388