ウーマンリブを謳い、女の一人旅を薦めるなど、創刊時からずっと女性の自立を応援してきた『anan』。ファッションやヘアスタイル、メイクなどの特集は男性にモテるためではなく、(多少は男性目線を気にしていましたが)読者自身の満足感を高めるためのものでした。このような特集が多かったので、当時の『anan』読者はモテや男性に興味がないのかと思いきや、そんなことありませんでした。なんと『anan』No.369では「男(あなた)と住みたい」という特集を組んでいます! お気づきでしょうか? 男性にモテる方法を指南するのではなく、読者には「すでに彼がいる」というのが大前提。大好きな彼と四六時中一緒にいる手段として同じ屋根の下に住むことを提案しているのです。例えば、彼の服を着る、部屋着にこだわる等『anan』らしくファッショナブルに同棲の楽しみ方を紹介しています。
今回ピックアップしたページはこちら。不動産屋さんが、カップルが一緒に住むための部屋探しのポイントを教えてくれる企画です。気になるのはイラストの沿線図。よく見ると駅の横に「10」「8.3」など数字が振ってあります。この数字はその駅から徒歩10分以内で築3~7年の2DKアパート(6、4.5、DK5)の平均家賃です。表参道12、中目黒8.1など…。当時と今は物価が違うとわかってはいるものの、「安っ!」と思いませんか?
この号では同棲にまつわるトラブル(大家さんや両親等)、「こんな女(ひと)となら、一緒に住んでいい」という男性意見やさらには避妊についてまで言及しているのですが、その先にあるかもしれない「結婚」についてはほとんど触れていません。それもそのはず、日本において婚姻数のピークは1972年で、以後1987年のバブル景気前半期まで見事な右肩下がり。この号が発売された1983年は婚姻数が年々下がっている最中でした。1970年~1980年代前半は女性の生き方に選択肢が増えた時代。オシャレしたい、働きたい、遊びたい、彼とも楽しく過ごしたい、でも結婚はまだいいや…。そんな女性が多かったのかもしれません。
『anan』はその時代の世相を映し出す雑誌といわれることが多いのですが、当時も今と変わらず女性たちのニーズを捉えていたんですね。
1983年2月18日発売(2月25日号) No.369