創刊してしばらくは、ひとり旅や就職・職業特集で、女性の自立を応援してきた『anan』。1980年代は、特に女性たちのひとり暮らしを応援していました。当時、多くの女性が住んでいたのは、狭いワンルーム。経済的に厳しいひとり暮らしにおいて、狭い部屋でいかに快適に暮らすかということは、最大の悩みでした。そんな女性たちに向けて、『anan』はオシャレな雑貨や家具など、ひとり暮らしを快適にするインテリアを提案。また、模様替え、収納術、ひとり暮らしの困りごと解決法、そして男性との関係など実用的なテクニックを紹介し、女性のひとり暮らしをサポートしてきました。1989年の『anan』No.697では「ひとり暮らしを失敗しない」という特集を組んでいます。このタイトルから、当時女性がひとり暮らしをするということは、挑戦だったり賭けだったということがうかがえます。現在のように、困ったことがあればすぐに検索できる時代ではありません。『anan』のひとり暮らし特集は、ひとり暮らしに挑戦する女性にそっと寄り添う存在だったのではないでしょうか。
ピックアップしたページは、こちらの部屋着特集。このページ、とってもかわいいと思いませんか? このように『anan』は女性たちの知りたいという願望だけでなく、彼女たちからキラキラワクワクするような感情も引き出していきました。雑貨、家具、部屋着…etc.金銭的に大変なひとり暮らしにおいて、すべての欲望を満たすのは困難なこと。そのような状況下で、『anan』のひとり暮らし特集の根底にあるのは「お金をかけずにかっこよく」というチープシック精神と一点豪華主義でした。自分が好きなものに囲まれた生活の喜びは、何事にも変えられません。読者は『anan』を読んでひとり暮らしのノウハウを身につけ、本当にイイものを選ぶ目を養っていきました。
1989年10月20日発売(10月27日号) No.697